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伝統芸・文楽が描く「忠臣蔵」…忠義に勝る親心 - 読売新聞

 雪がちらつく、底冷えの京都・山科。主君の切腹で浪人となった大星由良助(おおぼしゆらのすけ)宅で、白髪交じりの家老が、いまわの言葉を残そうとしている。家老は、別の主君に仕えている加古川本蔵(かこがわほんぞう)だ。

 大阪・国立文楽劇場で上演中の「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の九段目「山科閑居(やましなかんきょ)の段」。討ち入りそのものを描かない現行の忠臣蔵では、この段が事実上のクライマックスとなる。かつては名うての太夫でも一度は辞退し、「おこがましくも」と口上に付ける習わしがあったという屈指の大曲である。

 本蔵の娘・小浪(こなみ)と由良助の息子・力弥(りきや)は婚約者。刃傷(にんじょう)事件が起こる前に交わした約束通り、祝言を挙げようと、本蔵の娘は母と山科を訪れた。ところが、応対した由良助の妻・お(いし)は「こし入れの土産に本蔵の首を」と告げる。

 本蔵は、刃傷事件の際、殿中で高師直(こうのもろのお)に斬りかかる塩谷判官(えんやはんがん)を抱き止め、本懐を遂げさせなかった張本人。お石は許せなかった。虚無僧姿で一部始終を見ていた本蔵が正体を明かし、逆に遊興にふける由良助を罵倒する。その修羅場で力弥の(やり)が本蔵の右腹に刺さった。恨みを晴らしてもらうため、わざと手にかかったのだ。

 本蔵は息も絶え絶えに言う。《忠義にならでは捨てぬ命。子ゆゑに捨つる親心。推量あれ由良助殿》。武士は忠義に死ぬべきだが、私は娘のために死ぬ、その心を察してくれと。本蔵の人形を遣うのは、桐竹勘十郎。太夫の豊竹藤太夫が鶴澤藤蔵の三味線にのせ、切実な親心を際立たせた。

 武家社会の忠義を描いた壮大な群像劇の中で唯一、娘の幸せを願って死を選んだ本蔵。むしろ忠義の否定とも受け止められかねないこの九段目にこそ、初演から250年を超えてなお、名作たりえる由縁があるのかもしれない。(冨野洋平)

 仮名手本忠臣蔵 国立文楽劇場が開場35周年を記念し、春夏秋の3回に分けて全11段を通し上演する最終回。11月24日まで夜の第2部で八~十一段目を披露する。

 八段目「道行旅路(みちゆきたびじ)嫁入(よめいり)」は、戸無瀬(となせ)と小浪の母娘が婚約者の大星力弥を訪ね、鎌倉から京都・山科への道中を描く。十段目「天河屋(あまかわや)の段」は、浪士の武具を調達した大坂・堺の商人、天河屋義平が主人公の物語。十一段目「花水橋引揚(はなみずばしひきあげ)より光明寺焼香(こうみょうじしょうこう)の段」では、討ち入りを果たした浪士が主君の墓前へ報告に向かう。(電)0570・07・9900。

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November 18, 2019 at 01:00PM
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