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僕らの人生は個性的か?東京を「ずっと忘れて生きていた」、岸政彦が描くもの - BuzzFeed Japan

振り返ってみた時、社会学者として、そして小説家として書いてきたものは常に一貫していた。今この瞬間も、人は「普通の人生」を生きている。だからこそ、あらゆる人の語りに耳を傾けたい。区別すら、したくないという。

私には幼稚園ぐらいのときに奇妙な癖があった。路上に転がっている無数の小石のうち、どれでもいいから適当にひとつ拾い上げて、何十分かうっとりとそれを眺めてたのだ。広い地位急で、「この」瞬間に「この」場所で「この」私によって拾われた「この」石。そのかけがえのなさと無意味さに、いつまでも震えるほど感動していた。

統計データを使ったり歴史的資料を漁ったり、社会学の理論的な枠組みから分析をおこなったりと、そういうことが私の仕事なのだが、本当に好きなものは、分析できないもの、ただそこにあるもの、日晒しになって忘れ去られているものである。(『断片的なものの社会学』)

この「東京の生活史」プロジェクトでも、ちょっと表現するのが難しいですが、「いろんな人々の、何でもない話」を聞きたいんですよ。

僕みたいな仕事をしていると、うまく言えないけど、「マイノリティちょっといい話」を聞きたがる人がいる。そういう仕事は全部断ってます。あと、同時に、「マイノリティすごくかわいそうな話」を期待されることもある。そんな仕事も絶対にしません。

自分では、自分なりに「差別」や「マイノリティ」の研究をしてると思ってます。だから、今回の企画も、できるだけいろんな人々に話を聞きたいと思う。でも、そういういろんな人々の、普通の語りを聞きたい。

うまく言えない(笑)。本当に普通の語り。「普通」って何かわからへんけど。それは僕にとって、「小石」のようなものです。埋もれてしまうような、小さな、そして多様な。

でも、それを「作為的」に、「意図的に」集めてしまうと、だいぶおかしなことになる。

この企画のおもしろい、そして大変なところは、語り手じゃなくて聞き手を集める、ということです。それは大きく言って二つの意味があります。

「東京の生活史」プロジェクトでは、100人くらいの人の語りを残したい。そう思った時に、1人では無理だなと思いました。沖縄戦の調査をしていますが、ひとりでやってて、5年の間に話を聞くことができた人の数は55人です。

それに生活史のインタビューって、ぶっちゃけ誰にでもできる。俺じゃなくてもできるんです。だから、聞き手を公募することを決めました。それがまずひとつ。

そして、この聞き手の公募には、実はもう1つ大きな理由があった。それは集める語りを作為的にしたくないというものでした。

ここに登場する語りが、もしも全て健康な日本人男性によるものであったとしたら……。それは逆に非常にいびつな、偏ったものになりますよね。

でも、その逆、例えばいろんな属性や指向性をもった「マイノリティ」を、たとえば人口から計算して比例配分するようなことをしたら、それは本当にダメでしょう。いろんな「マイノリティ」を並べて、何かの「見本市」のようにしてはいけない。

人の人生っていうのは、やっぱり切ったら血が出るものです。とても重い。その重みを持ったものを軽々しく並べてはいけない。もちろん、それでもたくさんの生活史を「並べて」出すわけですから、その「責任」は私が取りたいと思います。それでも、どう言えばいいか難しいですが、東京という都市の「ミニチュア版」を作ろうとしたら、たぶん失敗するんじゃないか。

代表性なんて、どこにもない。個人の語りなんて、偶然の集まりでしかないですから。だから、聞き手を集めてきて、その聞き手にお任せすることで結果的に集まった語りを並べるようにしようと。聞き手の募集には、そういう意味があるんです。

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July 26, 2020 at 08:19AM
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