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動物愛護センターで働く人たちの葛藤を描く | Confetti - カンフェティ

 声にならない声に耳と心を向けた作品を多数届けているTOKYOハンバーグ。4月公演の『朧な処で徐に。』が新型コロナウイルスの影響で延期になり、世の中は停滞していたが、劇作家として動きを止めることはなかった。6月には新団員を迎え、この度2020年12月に日本劇作家協会プログラムとして『最後に歩く道』の再演が決まった。主宰の大西弘記と新劇団員・吉本穂香に話を聞く。

インタビュー写真

本が上がるのを待ってくれている仲間がいる

大西「4月に入って嘘のように何もなくなって、そんな中でも雑誌のエッセイやコラム、流山児さんから『ジャパンデミック 〜13人のイカれる作家たち〜』というショートショートの映画脚本の依頼を頂いたり、なんだかんだ仕事はしていましたね」

―――そんな中で吉本さんが入団されました。3月に大学を卒業されたばかりだそうですね。

吉本「そうなんです。劇団のオーディションを受ける前にワークショップを受けてみたいと思って参加させてもらったのがきっかけです。こんな小娘に大西さんは最初からすごくフランクに話しかけてくれて驚きましたけど嬉しかったです」

大西「オーディションの時に色々見ていて、学校を出たばっかりで余計なものを身につけていなくて勘がいいなって思ったんです。僕は劇団員を取るつもりがなく、ひとりの方が気楽だなぁと思っていたんですけど、ワークショップ後のアンケートに、僕の下で演劇を学びたいと書いてあって、それはどういう意図で書いたか分からないけれど、そう思ってくれているんだったらと。
 たとえば僕が本を書いていて、眠くなったら寝ちゃいますけど、本が上がるのを待っていてくれている仲間がいる、自分のためと仲間のためになっているという構図がいいと思いまして。
 この子は勝手に女優として成長していくと思うので、僕は環境を与えるだけです。基本的なことは学校でやってきていると思うので稽古が始まっていく中で見守りながら」

―――演劇の学校はどんなところでしたか?

吉本「そもそも演劇をやるための場所として集まっているので意欲的な仲間が多かったですね。在学中はまだコロナの頃ではなくずっと稽古ができる環境だったので、休んでいる余裕はあまりなくて。半期に1回公演があるので、それに向かって2〜3ヶ月はずっと集中していました」

15年前に拾った子猫がきっかけ

―――そしてこの12月に公演が決まり嬉しいです。本作を選んだ理由は?

大西「動物愛護センターで働く人たちのお話で2015年に新作として発表した作品ですが、この作品を座・高円寺という大きな空間でやりたいという想いが強かったことが理由の一つです。今なぜやるのかと言えば、この作品の社会的な問題に関してはずっと現在進行形だと思うんですね。何かがきっかけでというわけではなくて、これ以外の作品をやっている時もこのテーマへの意識はずっとあるんです。それはこれまで書いてきた作品も然り」

―――動物の保護、殺処分は長い間社会問題の一つであり、近年は保護猫カフェなどメディアでも多く取り上げられてきました。そもそも執筆のきっかけは大西さんが保護された愛猫・グロスターに関係が?

大西「そうですね、今から15年前に家の前で拾った子猫がいて、作品の散文詩に書いたのは僕と飼い猫のグロスターのことなんですよ。『処分します』という言葉はずっと頭に残っていて、その言葉がきっかけでこの作品を書いています。
 本編には僕とグロスターの話は全然出てきませんけど(苦笑)。動物が殺処分されることを皆かわいそうだと思いますが、でも僕はそこではなくて、そこで働く職員の人たちをフューチャーしています。実は殺処分は獣医の免許を持っていないとできないんです。でも獣医さんになる方は殺したいからなるわけじゃなくて『動物が好きだから』志が明確だと思うんです。現場では殺処分される現状を改善していこうと志願する人もいれば、やりたくないと辞める人もいる。でも辞めても殺す人間がかわるだけで殺される動物はかわらない。僕が書きたいのはその辺りですね。誰がそうさせているのか、どんな思いでそうしているのか」

吉本「私は動物を飼っていた経験がなく、身近なお話でもなく。でも大西さんが飼っていた猫のお話を聞いた時に、この作品のテーマに対して同じような想いを抱いている人は多いだろうなって思ったんです。しっかり自分も向き合ってのぞまないといけないなと」

―――大西さんはテーマとなる場所に出かけたり、人と会うなどリサーチされますが、吉本さんはどう役に向き合いますか?

吉本「調べものはしっかりしますね。一人で見るノートにまとめます。演じるまで全く知らない世界が多いので、演じるにあたってしっかり知るということは大事にしたいと思っています」

思っていることをやっと言葉にできた感じです

―――役どころについて教えてください。

インタビュー写真

大西「今回ハンバーグ初出演の屋敷健一さんが主演・四方慶介役を演じます。オーディションに来てくれた方を僕は主演にあててしまうことが多くて。この四方役は僕の中でイメージがありまして、屋敷さんがぴったり合うなぁと感じました。屋敷さんを含めて今回オーディションから5人初めて参加していただきます。4月公演に出演するはずだった井上薫さんや脇田康弘さんも出演するので楽しみにしていてほしいですね。
 吉本の役はその屋敷さん演じる四方の娘役を演じます。四方は早くに奥さんを亡くし、男手ひとつで娘を育てていて、市営バスの運転手だったのですが民営化に伴い愛護センターに異動してきたという設定。その日から始まるお話です」

 物語は、動物愛護センターに辞令でやってきた男が、毎週月曜に起動するドリームボックスという殺処分の様子を目の当たりにし、現実と理想、必要と不要の間で慣れていく自分、そしてある事をきっかけに自身と向き合っていく姿を描いていく。

―――“ドリームボックス”初めて知りました。このネーミングには少々違和感が。

大西「エゴイストですよね。箱の中に一酸化炭素を注入して窒息死させるわけです。動物たちは恐怖に覆われ、苦しみ、もがき、息絶えるわけです。僕は日本という国の動物殺処分や、その数のカラクリを告発するような劇にするつもりはありません。誰かの声にならない声に耳と心を傾けて作品を書き発表するだけです。」

―――タイトルの「最後に歩く道。」とは?

大西「このタイトルは2つの意味を成していまして、1つは動物たちがドリームボックスへ向かう道、もう1つは作品を観ていただければと思います。タイトルはいつも考えるのは大変なんですよね(苦笑)。書いている最中に『あ、これいいな』と仮としておいて、進んでいくと『こっちがいいな』と、変化もしていきますね」

―――大西さんのお話を聞いていて、吉本さんはいつか企画や脚本を書こうなど想いはありますか?

吉本「脚本を書くなんてまだまだです」

大西「僕は26歳ぐらいから書き始めたからね。ふと、書いてみようってなるかもしれない」

吉本「では5年後あたりに(笑)。私が演劇をやっている理由は、こういう人になりたいとか、有名になりたい、この劇場に立ちたいとかではなくて、お芝居を好きでやっていて楽しいから。自分が100%楽しんで挑んだものを観ていただいて、それを観た方が少しでも楽しかったと思ってもらえたら嬉しいです。
 今回プロデュース公演に初めて出演するのでとても緊張していますが、最年少なので下っ端らしく自由にいろんなものを吸収して、このチャンスを活かしていきたいです」

大西「去年は笑いの作品や社会派で思想的なものなどを書いてきましたが、この本に関しては一切笑うところはなく、観る側もそこにいるかのように叙事的に書かれている作品です。
 『動物が可哀想』を目的に書いているわけではない、というところを観ていただければ。そこで働く人たちの葛藤、苦労苦難、希望と絶望を描き、ちょっと鋭い作品になっていると思います。是非いらしてください」

(取材・文・撮影:谷中理音)

キメ画像2

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November 02, 2020 at 09:03AM
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