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「人々の優しさを描くことで現代社会の闇へ」 「ニューヨーク 親切なロシア料理店」のロネ・シェルフィグ監督 - 時事通信ニュース

2020年12月12日12時00分

クララを好演したゾーイ・カザン(中央) (C)2019 CREATIVE ALLIANCE LIVS/RTR 2016 ONTARIO INC.All rights reserved

クララを好演したゾーイ・カザン(中央) (C)2019 CREATIVE ALLIANCE LIVS/RTR 2016 ONTARIO INC.All rights reserved

 映画「ニューヨーク 親切なロシア料理店」はマンハッタンで創業100年を数えながら経営が傾いている老舗レストランを主な舞台に、大都会に集った多種多彩な人々が繰り広げる人間ドラマをつづる。デンマーク出身でベルリン国際映画祭の銀熊賞(審査員賞)を受賞した実績を持つロネ・シェルフィグ監督の最新作だ。

 製作総指揮と脚本も兼ねたシェルフィグ監督は「人々の優しさを描くことで、逆に現代社会の闇を浮かび上がらせたかった」と言い、「見知らぬ人々が築く絆」という大テーマを根底に据えながら随所にリアリティーを潜ませ、通り一遍のヒューマンドラマにとどまらない多層的な作品に仕上げた。

 暴力的な夫から逃れて2人の息子と共にニューヨークに出てきたクララ(ゾーイ・カザン)と、看護師の仕事に忙殺されながらセラピーの会を主宰するアリス(アンドレア・ライズボロー)。映画は二人の女性を中心に、レストラン「ウィンター・パレス」のマネジャーを務める訳ありの男マーク(タハール・ラヒム)や不器用な青年ジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)らが織り成す群像劇を描く。

 シェルフィグ監督が目指したのは「各キャラクターが独立した役割を持ちながら、それぞれのエピソードが集約されて一つの物語になるような映画」。かねて構想していた複数の物語を組み合わせて脚本を執筆したが、その味わいはさながら連作の短編小説を読むよう。「雑多な人間が集う大都会ニューヨークが舞台だからこそ可能になった趣向だった」と監督は話す。

 全編を通して「見知らぬ人々が出会うことで生まれる何か」を描きたかったという。登場人物は皆、心に孤独を抱えた人々だが、「レストラン『ウィンター・パレス』を通じて知り合いになることによって変化していく」。登場人物同士が気づかなかった過去の接点など「自分の願望に近いライトなファンタジー」も織り交ぜて作品を構成した。

 演出に際しては、劇中の登場人物と同様、各出演者がより良好な人間関係を構築できる現場作りに心を砕いた。「俳優たちも皆、今回の撮影現場で初めて出会い、そこで生まれた関係性が演技にも反映される。彼らが現場で成長できるような(各人の個性に合わせた)テーラーメイドの演出や演技指導に努めました」

◇作品ごとに新たなチャレンジを
 デンマークの国立映画学校で学び、卒業後はテレビ映画の監督として活動。「幸せになるためのイタリア語講座」が2001年のベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得したことで脚光を浴び、その後も「17歳の肖像」「人生はシネマティック!」などコンスタントに作品を発表する。

 映画作りのモットーは「作品ごとに新たなチャレンジをすること」。今作では「明るくふわっとしたトーンで作品を描きながら、その中に現実の厳しさや大変さを潜ませる」作りを試みた。クララやアリスの恋愛模様を描くなどロマンチックコメディーの要素を持つものの、貧困や家庭内暴力、医療現場の過酷さなど現代社会に横たわる数々の問題が色濃く影を落とす。

 「社会問題をダイレクトに描く方法もあるが、そのやり方は私にはそぐわないと思った。観客に無理に理解を強いるのではなく、自然にメッセージが届くような作品にしたかった。人間や社会のダークな部分を暗過ぎない形でどう描くか。それが今回、私が重視したポイントでした」

 ニューヨークを舞台にしたヒューマンタッチの人間群像は、モノクロ時代の古き良きアメリカ映画も連想させるが、自身が最も影響を受けたのは1950~60年代のイタリアやフランスの映画だという。「優しさや温かさ、インテリジェンスがある作品に心を引かれます」

 随所に挟まれるニューヨークの「飾り気のない風景」も見どころの一つ。「個人的にも大好きな街で、人々もとても温かい。国際的でたくさんの人種が混在している街で繰り広げられるドラマは万国の人々に共感してもらえるのでは」と話す。

 現在は5人の脚本家と共同でテレビドラマを製作中。舞台は病院で、今作のヒロインの一人を看護師にしたことが作品を構想するきっかけになったと教えてくれた。

 「ニューヨーク 親切なロシア料理店」は12月11日から全国順次公開。(時事通信社編集委員・小菅昭彦)

 ロネ・シェルフィグ(Lone Sherfig) 1959年5月2日生まれ、デンマーク出身。同国で台頭した映画運動「ドグマ95」のルールに基づいて製作した「幸せになるためのイタリア語講座」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。この他の主な作品に「ワン・デイ 23年のラブストーリー」「ライオット・クラブ」など。

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December 12, 2020 at 10:00AM
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