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安倍元首相銃撃事件現場の街頭演説、候補者はどう向き合う 分かれる対応 - 産経ニュース

安倍晋三元首相の銃撃現場付近で街頭活動する候補者。つらい気持ちからこの場所を避ける候補者もいる=奈良市

昨年7月、参院選の演説中に安倍晋三元首相が銃撃された奈良市の近鉄大和西大寺駅北側。人通りが多く、市内では有数の「街頭演説スポット」だ。ただ、事件現場となったこの場所に複雑な思いを抱く人は少なくない。政治家の中でも当時のことを思い出し、演説に立つことをためらう人はいる。事件後初の大型選挙となる統一地方選で、候補者たちはこの場所とどう向き合うのか。

「安倍元首相のご冥福を祈るとともに、遺志を受け継ぎさらに(奈良)県を良くするために活動していきたい」

奈良県議選告示日となった3月31日。自民党の現職候補は、同駅北側でスタッフとともに手を合わせた後、マイクを握りこう訴えた。

この現職候補にとって、安倍氏は尊敬する政治家の一人だ。「まだまだ日本のために頑張ってほしかった」と悔やむ。事件直後は現場付近を通るだけで重苦しい気持ちになった。その後現場付近は、奈良市の事業によって一部に花壇が設けられた上で車道として整備され、路面などは一新。だが、今も当時の凄惨(せいさん)な現場の様子がよみがえり、胸が痛む。

それでも、この場所で街頭演説をすることを決意。「有権者と直接コミュニケーションをとれる街頭演説は、政治家の使命。多くの人が往来するこの場所で、さまざまな声に耳を傾けたい」と力を込める。

一方で、別の判断をした候補者もいる。「あのときのつらい気持ちを思い出したくない」。こう話すのは、事件当時現場に居合わせた別の自民現職だ。しばらくの間、安倍氏が銃撃された場面がフラッシュバックした。また、事件が起きた参院選の選挙活動に携わった一人として、責任を感じ続けてきた。

今回の選挙期間中は現場近くで演説をすることは見送るといい、「自分の中ではそっとしておきたい場所。安倍さんが『もうここではやらないで』と言っている気がするんです」と打ち明ける。

事件は自民以外の候補者にも影響している。事件前から同駅周辺で街頭活動をすることが多かった立憲民主党の現職候補は「事件で政治活動中の命の危険を考えるようになった」とし、街頭活動の際は360度全方位に開けた場所は極力避けるなど、警備に気をかけている。

日本維新の会の新人候補も事件後、街頭演説中に死角ができないようスタッフを配置したり、周囲に目を配ったりするようになった。ただ、多くの有権者が行き交う同駅周辺での街頭活動は積極的に行う予定だ。「怖さより有権者の期待に応えたいという思いの方が強い。ここで自粛してしまうと民主主義自体が揺らいでしまう」と胸中を吐露した。(秋山紀浩)

銃撃事件後初の大型選挙 警察も警戒強化「失敗許されぬ」

今回の統一地方選は安倍元首相銃撃事件の後、初の大型選挙とあって警察も警戒を強める。

事件では、警察庁が奈良県警の不十分な警護計画や現場の意思疎通の不徹底など複合的要因が重なったとする検証結果をまとめた。県警は今春、警護に関わる人員を倍増したほか、指揮官や警護員の能力向上を目的に高度な教養訓練を実施するため「警衛・警護室」を新設した。

統一選に際しても従来の態勢を拡充して警護にあたるといい、県警の担当者は「選挙では街頭での警護機会が増える。絶対に事件を繰り返してはならない」と強調する。

警戒を強化しているのは奈良県警だけではない。大阪府警の向山喜浩本部長は3月28日の署長会議で、統一選の期間中、警護対象者の安全確保に万全を期すよう指示した。ある府警幹部は「事前の現地調査を徹底し、万全の態勢で臨んでいる」と話す。

5月には広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。別の府警幹部は「統一選の警備は、いわばG7サミットの前哨戦だ。失敗は許されない」と力を込めた。

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