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公安の逮捕も地検の起訴も「違法」認定…「大川原化工機」の国賠訴訟、都と国に賠償命令 - 読売新聞オンライン

 生物兵器の製造に転用可能な精密機械を不正に輸出したとして逮捕された後、起訴が取り消された会社社長らが計約5億6000万円の国家賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、東京都と国に計約1億6000万円の賠償を命じた。桃崎剛裁判長は警視庁公安部の逮捕と東京地検の起訴を違法と認定。「合理的根拠に欠け、必要な捜査を尽くさなかった」と述べた。国賠訴訟で起訴の違法性も認定されたのは異例。

 横浜市の精密機械製造会社「大川原化工機」の大川原正明社長(74)は2020年3月、経済産業省の許可を得ずに精密機械を不正に輸出したとして、同社元取締役・島田順司さん(70)や元顧問・相嶋静夫さんとともに外為法違反容疑で逮捕、起訴された。初公判直前の21年7~8月、地検の申し立てで起訴が取り消されたが、勾留中に体調を崩した相嶋さんは同年2月に胃がんで死去していた。

 判決によると、公安部は17年5月頃、霧状の液体をヒーターで乾かして粉末にする同社の機械について捜査を開始。同省は省令で「内部の滅菌・殺菌ができる」などの要件を満たせば輸出規制の対象としており、公安部は同省との協議を経て、この機械が要件を満たすと判断した。

 判決は、公安部は逮捕前の段階で、機械の設計担当だった相嶋さんらから「機械内部に温度が上がりにくい箇所があり、菌を死滅させる温度に達しない」と聞いていたのに、改めて温度を測る実験を行わなかったと指摘。「実験していれば、殺菌できる温度にならないことは容易に明らかにできた。社長らに嫌疑があるとした判断は合理的な根拠に欠け、漫然と逮捕したことは違法だ」とした。

 さらに、担当検事についても、温度に関する社員らの主張を起訴前に把握していたと認定。「有罪立証に必要な検証をせず、違法に起訴した」と結論付けた。

 判決は、公安部の警察官が島田さんに対し、「殺菌」の意味をあえて誤解させて供述調書に署名させた点も、「偽計を用いた取り調べで違法だ」と認定した。訴訟では、捜査を担った公安部の警部補が証人尋問で事件を「 捏造ねつぞう 」と述べたが、この証言への言及はなかった。

 判決を受け、警視庁の小松秀樹訟務課長は「判決内容を精査した上で今後の対応を検討していく」とコメント。東京地検の新河隆志次席検事は「国側の主張が一部認められなかったことは誠に遺憾。関係機関や上級庁と協議して適切に対応したい」とした。

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