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アニメ『BEASTARS』 恋か食欲か、肉食獣の苦悩描く|エンタメ!|NIKKEI - 日本経済新聞

「マンガ大賞2018」など数々の賞を総なめにしてきた板垣巴留によるマンガ『BEASTARS』(「週刊少年チャンピオン」連載、秋田書店)がテレビアニメ化。10月よりフジテレビで放送、ネットフリックスで独占配信が始まった。

『BEASTARS』 学園内で草食獣の少年が食殺される事件に端を発する青春群像劇。水曜24時55分・フジテレビ、木曜配信・ネットフリックスほか(C)板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会

スタジオは『宝石の国』のオレンジ、監督には『スチームボーイ』のテクニカルディレクターなどを務めてきた松見真一が就く。

肉食獣と草食獣が共存する世界。全寮制の名門高校・チェリートン学園で、生徒が食い殺される事件が起こる。演劇部所属の物静かなハイイロオオカミ・レゴシは、ドワーフウサギの女生徒ハルと出会い、「恋か食欲か」強く心を揺さぶられる――。擬人化した動物たちが、差別や恋、自らの本能と向き合う今作。松見監督は原作を読み、大きく2つの点で引かれたと言う。

「まず、レゴシとハルの間には、肉食と草食というどう考えても超えられない壁がある。『ドラマ的にどう話を持っていくんだろう』というところが気になりました。また、17~18歳の若い人たちの悩みが、そのまま動物たちに反映されているのも面白い。動物ものではありますが、基本的にはヒューマンドラマなんだなと」(松見監督、以下同)

松見監督がまず行ったのは「原作の面白さの分析」と「シナリオ作り」。「原作は非常にモノローグが多いので、それを生かそうと」。また、決まった話数で、生物学的違いによる複雑な世界観のなか、学園もの的群集ドラマを描く必要がある。そこでアニメでは「レゴシとハルの出会いから恋愛が成就するかどうかという流れを1つの軸にした」と言う。

松見真一監督 1959年生まれ、東京都出身。アニメーション監督、演出家。『紅の豚』の演出助手などスタジオジブリ作品や、スタジオ4℃作品にも数多く参加。早くからCGアニメーションに関わっていたことでも知られる

そのうえで目指したのは「音や匂いまで感じられる映像」だ。「例えば、(ウサギの)ハルは耳の先がちょいちょい動くなど、マンガでは止まっている動物たち特有の毛並みや尻尾の動きも入れて、柔らかさを出しました」。オレンジによる最先端の技術は、従来の3DCGの硬さを感じさせないアニメらしい表現を実現している。

原作者の板垣とも密にやり取り。「例えば、『食殺』『生態時間』という言葉は、聞くだけじゃ分かりづらい。でも、先生から『セリフや言葉はそのままでやってほしい』と話があり、確かにそこが作品の魅力なので、あえて残しています」

もともと強かった『BEASTARS』の作品力が、アニメでどのように進化するのか。必見の1作だ。

(日経エンタテインメント!11月号の記事を再構成 文/山内涼子)

[日経MJ2019年11月22日付]

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