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<ふくしまの10年・見えない放射能を描く>(5)こっちと向こう、違う? - 東京新聞

ゲートにて

ゲートにて

 イラストレーターの鈴木邦弘さん(46)が素材探しをするときは、駅などから一人で歩くのが基本。行けるエリアは限られるが、住民と出会った時など声をかけやすく、じっくり観察できる利点もある。

 描かれているのは、JR常磐線浪江駅から三十分ほど歩いた場所にある浪江町酒井地区。町の東側は避難指示が解除されているが、飛び地のように帰還困難区域が残り、その中を県道が走っている。

 本来は車しか走れないが、訪れた二〇一八年十月は帰還困難区域と気づかず歩いて入ってしまった。パトロールの車とすれ違ったが、「気をつけてくださいね」としか言われなかったという。

 県道の両側はガードレールやバリケードで立ち入り禁止になっている。農地に茂っていた雑草は刈られ、巨大な太陽光発電所(メガソーラー)が建設されようとしていた。その様子に鈴木さんは「空も空気もつながっていて、こんなゲートをつくっても放射能を防げるわけがないのに…」と違和感を感じた。

 「こっちはよくて、ゲートの向こうはだめ? 違和感というか、奇妙な感覚を伝えたかった」。鈴木さんのイラストには、「見る人それぞれにストーリーをつくってもらうため」におじさんと犬がキャラクターとして描かれる。犬だけに防護服を着させ、奇妙な感覚を表現している。

 ◆次回は7日掲載予定。ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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