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<ふくしまの10年・見えない放射能を描く>(6)道路だけ通れるなんて - 東京新聞


ただ人だけが何もなかったかのように忘れたふりをする

ただ人だけが何もなかったかのように忘れたふりをする

 東京電力福島第一原発の南西約七キロ、富岡町夜の森地区には約千五百本の桜並木が続く。浜通り地区を代表する名所の一つだ。

 イラストレーターの鈴木邦弘さん(46)は桜並木を何度も訪れているが、二〇一九年四月、初めて桜まつりの時期に行った。予想外の花見客の多さに驚いた。

 並木脇にある富岡第二中学の校庭には多くの出店が並び、ステージもあり、まさにお祭りムードだった。

 桜並木を北上すると、バリケードがある。その先は帰還困難区域で、許可なく入ることはできない。

 笑顔で桜をめでる客が多かったが、バリケードの向こうを指さし、まだ帰ることのできない自宅に切ない顔をしている避難住民の姿もあった。「こんな近くに(帰還困難区域が)あると思わなかった」と苦笑いする人もいた。

 現在、イラストにあるバリケードはなくなった。二〇年三月十日、JR常磐線夜ノ森駅までの道路は避難指示が解除された。

 解除の五日後、鈴木さんは隣の富岡駅から夜ノ森駅までを歩いたが、「何とも無理のある制限緩和。夜ノ森駅前のトイレは仮設で、住宅街は入れない。道路だけ通れるなんて、避難指示解除といえるんだろうか」と強い違和感を覚えた。

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