「スポーツの力」とは何か。コロナ前より、その役割、意義が問われ、そのパワーについて注目が集まる。アスリートを題材にしたイラストで世界的人気を博す田村大さん(36)。なぜスポーツを題材にするか聞くと、「力」に関して1つの答えがあった。

「アスリートって『スーパーヒーロー』なんだと思うんです」

似顔絵の国際大会(16年)で世界一となり、アーティストで生きると決めた3年前。「大人になってヒーローとして見ている対象は何なんだろう…」と考えたという。日本では、漫画の主人公の多くは子ども。一方でアメリカンコミックは、成熟した大人が主役。ヒーローが、体を鍛えて強くある。「米国人はその姿を見て、家族を大切にしたり、鍛えて格好良くいようと思っているのでは? 日本では誰なんだろう?」。

頭に1つのフレーズが浮かんだ。「ヒーローインタビュー」。試合で活躍した者の時間。「まるでスーパーパワーを手にして飛んだり跳ねたりしているようで、生身の体ですよね。そこにみんな夢を託して応援している。かなえてくれる存在だと」。その確信が、いまやインスタグラムでフォロワー10万人超えの創作活動の原点だった。

「日本人が見るとアメコミみたいに見えるし、米国人が見ると日本の漫画に見える。その間がオリジナリティーです」。作品は躍動感に満ちる。「そのスポーツの中でよりエネルギーを発しているシーン、勝負どころを選ぶようにしています」。夢中になった「ドラゴンボール」などの漫画を思い返しながら、「まさに必殺技を出している瞬間、ですよね」と形容する。J1ヴィッセル神戸のイニエスタ、ボクシングの村田諒太など、描いてきた選手は多様だ。

アスリートの躍動する姿を間近で見る機会が少ない今だからこそ、描かれた絵が与える強さ、速さ、美しさが印象を濃くするのかもしれない。「引き続き、世界を代表するアスリート、スポーツのシーンにどんどん関わっていきたい」。絵を楽しみに、直接この目で「必殺技」を見られる時も待ちたい。【阿部健吾】(日刊スポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)