「高井凜容疑者の自殺を防げなかったのは警察の大失態です。事件から逮捕まで捜査に1年も時間をかけてようやく本命の殺人容疑で再逮捕にこぎつけた直後ですからね、関係者の処分は避けられないでしょう。そもそも凜容疑者は取調べ中の雑談で『逃走を考えている』と話していて、看守が重点的に巡回する『特異被留置者』に指定されていました。しかしこうなってしまっては、一体どの程度の監視体制だったのかと疑問視せざるをえません」(社会部記者)
高井凜容疑者(28)は、2021年7月に大阪府高槻市で高井直子さん(54)を殺害した容疑で再逮捕され、大阪府警福島署に勾留されていた。しかし9月1日午前7時ごろ、凜容疑者が留置施設の部屋で首をつっているのを巡回した看守が発見し、病院に搬送されるも死亡するという“大事件”が起きた。社会部記者が解説する。
「凜容疑者は7月20日に有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕されて以来、大阪府警福島署の留置施設の個室に入っていました。凜容疑者は署員が1日の午前6時44分に巡回した時には布団で横になっていましたが、その18分後の午前7時2分に巡回したところ、布のヒモを束ねたもので首を吊っているのが発見されました。発見された時点で既に意識がなく心肺停止状態で、1日の夜には死亡が確認されました」
これまでの捜査で、直子さんと凜容疑者の2人が事件発生の約5カ月前に養子縁組を行い、直子さんに約1億5千万円もの生命保険をかけられていたことが判明しているが、動機などの真相解明はまさにこれからと思われた矢先の“自殺騒動”。警察の管理下での自殺というと、2012年にも兵庫県尼崎市の連続変死事件で逮捕されていた角田美代子容疑者が留置場で自殺したことが大きな話題になった。
「容疑者が死亡すれば不起訴、事件はお蔵入り」
警察ジャーナリストの小川泰平氏が、留置場内での自殺が警察にとって絶対に避けなければいけない“大きなミス”である理由をこう説明する。
「警察は事件の真相解明が責務。しかし容疑者が死亡すれば不起訴になり、容疑者の口から何も語られないまま事件がお蔵入りすることになるので、自殺させるわけにはいきません。留置場では先輩から巡回の要諦をみっちり教えられますし、自殺された場合には、署の留置管理課長はもちろん、その場にいなかった係長などの責任者にまで処分が及ぶこともあります」
警察にとって容疑者の自殺は絶対に避けたい事態であるにもかかわらず、こうした失態はなぜ繰り返されるのか。
「容疑者の自殺や自殺未遂があるたびに巡回が増やされ、40年ほど前までは1時間に2回の見回りだったのが現在は4回。さらに『特異被留置者』、『特別要注意被留置者』という“要注意人物”に指定されると頻度が上がります。凜容疑者が指定された『特異被留置者』だと見回りが1時間に5~6回に増え、扉を開ける時も殴りかかったり鍵を奪おうとする危険を防ぐために複数の警察官で対応します。『特異被留置者』は1つの留置場に1人もいるかいないかのレベル。『特別要注意被留置者』だと、房の前に椅子を置いて24時間つきっきりの対面監視になります」(小川氏)
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