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夫の死と子供の誕生……何があっても創作を止めなかったアーティストにとって“描く”とは(文春オンライン) - Yahoo!ニュース

 発表の場が限られたとしても、ものをつくる手を止めることなどなく、想像の羽根をいっそう広げる……。それがアーティストと呼ばれる人たちだ。

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 とりわけ画家・近藤亜樹は、これまでもどんなときだって、創作のテンポが緩むことなんてなかった。今もまた、脈々と絵を描き続けている。

 彼女の新作を紹介するとともに、本人の言葉に耳を傾けてみよう。

根っこにあるイメージを描き出す 

 2010年代の初頭から作品を発表し始めた近藤は、ひじょうに多作だった。湧き出るようにして、絵を生み出してきた。

 札幌で生まれ、幼少のころから描くことが好きだったので、長じて東北芸術工科大学へ進学。日常をモチーフにしながら、見るものの想像力をかきたてるダイナミックな作品で在学中から突出していた。大学院在学中に東日本大震災を経験し、2015年にはその経験をモチーフに、実写と絵画アニメーションを融合させた短編映画『HIKARI』を発表。新しい表現形態をつくり上げた。

 植物が光合成をして二酸化炭素を酸素に変換し続けるように、ごく当たり前の日常として描くという営みがある。頭で考えるというより、何かを感じながら身体を動かしている、と近藤はいう。

 描くモチーフも、いつもおのずと浮かんできた。

「目に見えている外の世界をそのまま模写するのではなくて、事物の根っこのほうにあるイメージを描き出そうとしています。小さい頃から、りんごの絵を描く時は、りんごを食べてから描きなさい、自分が感じたものを描きなさいと言われて育ちました。自分で体験したことしか描けないのは今でも変わらないです。だから赤いりんごを食べて感じた色が虹色でも構わないのです」

私にとって絵は人生

 近藤は近年、最愛の夫を亡くし、そのすぐあとに息子を出産するという経験をした。日常が劇的に変化し、近藤自身の人生観も180度変わった。作品への向かい方も以前と異なってきた。

「私にとって絵は人生です。夫の死と、子供の誕生は天と地ほど違い、肉体と精神が引き裂かれるほどの衝撃的な出来事でした。子供が生まれてくるまでの間、ショックであまり記憶がないのですが、生まれてこようとする力強い生命に励まされ、なんとか生きるために絵を描く日々でした。

 描くことで傷つき、描くことで救われる。辛い時期を乗り切る勇気が、私にとっては絵を描くことでした。絵は心とは裏腹に残酷にも美しく、それは生きるということそのもので、一筆一筆絵の具を置くように、今は生きているという感謝と喜びを確かめながら、ゆっくり大切に描いています。生きることは絵を描くこと。絵は光です」

 夫とは記憶や思い出でつながりつつ、子育てをしながらキャンバスに向かう。そこから生まれてくる絵は、いまの近藤亜樹だからこそ描ける表現であるに違いない。

 この時世でリアルな展示の場が失われるなか、近藤亜樹作品は現在、所属ギャラリーのシュウゴアーツによって、ウェブ上の展示として観られるようになっている。近藤亜樹オンラインショー「心に花を」。

 人はずっと昔から、いつだって心を豊かにするものに触れることで、今を生きて未来をつくってきた。現在のようなときこそ、心の栄養をたくさん取ろう、その一助になればという近藤の思いが、ギャラリーによってかたちを与えられた。

 開催に寄せて、近藤は言う。

「今こそ想像力を育て、心に花を咲かせてください」

山内 宏泰

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May 09, 2020 at 09:00AM
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