岡山県備前市は5日、新年度から子どもの給食費や学用品費、保育料の無償化をマイナンバーカードを取得した世帯に限るとしていた施策について、撤回すると発表した。昨年12月に保護者らに通知後、「教育の機会均等に反する」「カード取得の強制だ」といった批判が上がり、反対署名が5万筆以上集まっていた。
吉村武司市長が同日午前に会見し、施策の撤回を表明した。吉村市長は「国の方針に基づくデジタル市政を進めるためには、マイナカードの取得は大切。強制はしないが、これからも取得してもらうために努力を続ける」と語った。撤回するのは、子ども全員を無償化できる財源が確保できたためという。
市は、市立小中学校の給食費と学用品費については昨年度から無償にし、保育料は数年前から無償化していた。ところが昨年12月、新年度以降は世帯全員のマイナカード取得を条件とする方針を文書で通知。吉村市長は会見などで「国の構想に呼応したもので、(役所と市民)相互の利益につながる」「カード普及は市にとって発展の鍵」とし、市議会は3月に関連条例案を8対7で可決していた。
政府は今年3月末までに「ほぼ全国民に行き渡ることをめざす」とし、自治体への地方交付税の算定に普及率を反映させる考えを打ち出していた。総務省が公表している交付状況によると、2月末時点の全国の交付率は63・5%で、備前市は78・2%。市の担当者は「カードの普及で市の歳入が増えれば、無償化施策などを続けやすくなる」と説明していた。(原口晋也、小沢邦男)
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