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小劇場の懸命な取り組み 時勢への抵抗描く舞台 - 日本経済新聞

トラッシュマスターズの舞台「対岸の絢爛」(ノザワトシアキ撮影)

トラッシュマスターズの舞台「対岸の絢爛」(ノザワトシアキ撮影)

演劇公演が新型コロナウイルス感染症対策のため相次いで中止に追い込まれた3月半ば、東京の小劇場で懸命の舞台が試みられた。トラッシュマスターズの「対岸の絢爛(けんらん)」(6~15日、下北沢駅前劇場)で、カジノ施設誘致をめぐる人間模様を中心に時勢に立ち向かう抵抗の精神を描く力作だった。

主宰の中津留章仁が作・演出した舞台は1945年7月の九州の離島、80年代の瀬戸内海の港町、近未来の関東地方Y市と時空を転じる。第2次世界大戦末期、舟の徴用を求められた漁民は潜伏キリシタンの子孫らしく、天皇を持ちだす軍人に頑強にあらがう。ドラマは抵抗の系譜をたどるようにバブル経済時代に飛び、福山市鞆の浦とみられる港の環境保全運動へ、さらに現代を二重写しするIR問題へといたる。

利権まみれの開発が地元に金をばらまき、賭博の誘惑などから漁師のコミュニティーが崩壊する例は、この国で実際にあったことだ。舞台では賭博依存からの更生が抵抗者の誕生となり、役者の巧みな演じ分けによって批判精神がリレーされるさまが浮かび上がった。経済事情や地域の因習を超える力として不屈のキリシタン信仰をおいた作劇に妙味があり、作者の確かな成長がみえた。

舞台の緊迫感は世情の反映でもあったか。観客は手指をアルコール消毒したうえでマスクを着用し、間隔をあけた簡易椅子にすわる。体調不良者は係員に申し出ること、せきエチケットの徹底などの指示があった。いつもと違う空気の客席から注視する観客にこたえようと役者も必死になる。

カーテンコールで、役者代表があえて来場してくれた観客に心のこもった謝辞を述べた。同様の言葉を88歳の福田善之がPカンパニーに書き下ろした「京河原町四条上ル近江屋二階」でも聞いた。演劇をすることがあたりまえでなくなったことで、一期一会という演劇の本質が明らかになったことは記憶されていい。

(内田洋一)

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March 25, 2020 at 07:49AM
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